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釧路市医師会方針

令和7年度 釧路市医師会事業計画

各専門部は、令和7年度釧路市医師会事業計画を踏まえつつ、以下の事業を中心に活動する。

 昨年度は4⽉から診療報酬改定、医師の働き⽅改⾰が始まり、6⽉の役員改選、8⽉の休⽇夜間急病センターの開設と運営、看護専⾨学校の今後の運営の検討が医師会事業活動の中⼼となった。診療報酬改定は、医療従事者の賃上げと医療DXの推進、⾼齢者医療と地域包括ケアの強化が3本柱に構成されたが、医療を取り巻く環境は年々厳しさを増している。医療材料費を含む諸物価の値上がり、人件費の上昇、コロナ補助金の打ち切り、コロナ前の患者受診状況に戻っていない事などが原因で、民間医療機関のみならず、国立病院の6割が赤字経営となる等、全国各地の公立および公的病院の経営が逼迫しており、経営母体の異なる地域の基幹病院間の統廃合が現実に行われるようになってきた。診療報酬の増額改訂、公的補助が不可欠と叫ばれている中、必要な公的助成や社会保障費の増額などを政府に求めながら、地域においては医療機関の連携、役割分担、経営や運営に関する情報の共有を進め、競うのではなく助け合いながら共存共栄していく知恵と、普段からの相互理解と良好な協力関係が必須と考えられる。また医師の働き方改革の実施初年度を振り返ってみると、現場ではいろいろな問題点が出ているが、医師は労働者で、労働基準法のもとにある職業であることは認識すべきであるが、医師偏在が解消されない中、この労働基準法下の働き方改革で果たして地域の医療が守られるのかは不明瞭で、人口減少時代に適応した医療体制、医療サービスの改革を検討していく必要がある。そういう意味では、今年7月に予定されている参議院議員選挙においては、国民の生命と医療を守る医師の医療活動を支えるため、医療現場の生の声を届け実効性のある改革が期待できる議員を選出したい。トランプ関税やインフレ、世界各地の戦争など先が⾒えない社会状況が続く中、⼀⽇も早く戦争が終わることを祈りつつ、釧路市医師会は、社会の中で医療従事者としての役割を再認識し、⾃分ができることを⼀⽣懸命⾏う集団として、より良い地域社会の構築に努⼒していきたい。
 そうした中、今年度の釧路市医師会事業の中で最重要課題は、5月23日の臨時総会で議決された釧路市医師会看護専門学校の令和8年度募集停止と、令和12年度閉校予定に向けた準備である。閉校時期は最長令和12年度閉校予定とすることで今年度入学生の不利益にはならず、入学生に最後まで責任を持つことになるが、各学生の進級、卒業が順調であれば令和9年度に閉校となるため、それに向けて学習支援、進路相談等を個別に綿密に行い全力を尽くしたい。その上で、再履修者や病欠等で休学になるケースが出た場合に備え、他校への編入、受け入れなどの代替案を用意し、学生に不利益が無いように準備するとともに、教職員の円滑な再就職への支援や、転職活動のサポートも並行して行いたい。また看護師不足は医療機関の存続、医療の質の低下などに繋がるため、看護師確保に向けて北海道、釧路市、周辺自治体、医療多職種機関等と連携し協議を進めていきたい。
 二つ目の課題は釧路市休日夜間急病センターの持続可能な運営の確立である。将来の開業医数の減少と医師の高齢化、看護師等の医療資源が減少することを見据え、釧路市と協働で釧路市休日夜間急病センターを昨年8月に開設し1年を迎えようとしている。診療現場では感染症の抗原検査は原則行わず、応急処置と2次救急へのトリアージを目的とした初期救急医療を提供しているが、受診前に看護師による電話相談を行うゲートキーパー的システムを導入し、問診と重症化リスクの判断をしつつ患者と相談の上、受診か自宅療養かを決めている。相談者数は受診者数と同程度で、その5割強は受診していない。感染症流行期の年末年始5日間の1日平均患者数は156.6人で、在宅当番時代の半数以下という期待以上の結果を得られ、今年度もこの基本的な運営方針を維持するとともに、出向医の安定的確保、繁忙期限定の放射線技師の雇用、相談窓口のマンパワーの強化、職員のスキルアップなど漸次改善を重ね、地域の皆様に理解と協力を頂きながら持続可能な釧路市の救急医療体制を整えていきたい。
 三つ目は医師不足の問題で、令和4年頃から基幹病院の精神科診療の大幅縮小や休診、クリニックの閉院等が続き、釧路管内の精神科医療の逼迫は現在も変わらぬ問題となっている。精神科医療は行政と公的病院、民間医療機関が協力して地域の医療体制を維持することが基本であるが、最重要課題の精神科開業医の確保は、令和5年釧路市が創設した診療所等の開設助成金制度を4医療施設が利用し新設と継承が成され、今後、軽症患者の外来診療機能の向上が期待される。今後はさらに新規参入医師の情報収集と、メンタルヘルス対策としての行政や医療機関等による相談窓口の活用、市民周知についても医師会として提案していきたい。また小児科開業医不足、高齢化も深刻で、診療縮小、閉院も危惧される中、会員各位のネットワークの中で、助成金制度を活用して釧路での開業に可能性のある小児科医や総合診療科医に声をかけて頂くとともに、将来の内科系医師不足に備え、開設助成金制度の対象診療科を、内科、総合診療科等の診療科にも適用拡大するよう行政に提言していきたい。
 関連事業では、1)健診センターは急激な人口減少、企業の縮小、撤退など社会状況の影響、人件費や諸物価の上昇など厳しい状況の中、昨年度は増収増益となったが、今年度も顧客が求めるサービスの多様化に対応して現有顧客の離脱を防ぐ一方、管内各方面から情報を集めて新規顧客を獲得していきたい。2)今年7月6日に第57回北海道ドクターズゴルフ大会が10年ぶりに釧路市で開催されるが、参加人数は約70名を予定しており、役員と関係会員の協力による円滑な大会運営と、参加者が親睦を深め楽しめる大会にしたい。
 一方日本の医療に目を向けると、医療DX、ICT化は様々な問題が出て修正されながらも、今年度も政府が示した医療DXの推進に関する行程表にそって進められるであろう。オンライン資格確認等システムの導入が原則義務化されており、昨年秋には健康保険証が廃止され、マイナンバーカードによる健康保険証利用を基本とする事となった。マイナ保険証の利用率は上昇しており、患者の周知度と対応度も徐々に上昇しているという。また政府は2030年までには医療情報を全国で共有できるシステムの導入や電子カルテの標準化を目指しているが、情報セキュリティの問題や個人情報漏洩事例も常態化している中、導入資金や導入後も負担が大きいメンテナンス費用、情報漏洩時の補償など医療機関の負担や、患者の意向と個人情報保護を十分配慮したとは言い難い進め方に不安を禁じ得ない。地域医師会として現場の状況を北海道医師会、行政に情報提供し、将来の利便性を理解しながらも診療や社会に混乱が生じないよう慎重に対応していくよう提言していきたい。
 釧路市医師会は今年度も医療多職種、行政と緊密な連携をとり、医療、介護、福祉が三位一体となって市民が安心して生活ができる街作りに参画し、地域住民、医療従事者が健康で健全に生活、仕事ができる地域社会の実現に努力していきたい。

 新たな年度においては次に掲げる各部の事業に精力的に取り組む所存です。会員各位のご理解、ご協力をお願い致します。

  1. 総務部
    1)定款・諸規定の整備に関すること
    2)各種会議の効率的開催
    3)勤務医の入会促進(医療関連事業部と連携)
    4)健全会計保持のための対策研究(財務部と連携)
    5)新入会員に対する説明機会の確保
    6)医師会組織の更なる強化
    7)個人情報の保護・診療情報の開示についての情報提供
    8)一般社団法人移行後の会務の適切な管理・運営
    9)関係施設への情報の徹底
    10)会員の個人情報に関すること
  2. 医療政策部
    1)医療政策の研究・提言、情報・資料の収集、整備、提供
    2)医療制度改革に関する情報・資料の提供(勤務医、開業医協同作戦)
    3)地域保健・医療・福祉へのより積極的な取組と協力
    4)地域医療住民フォーラムの開催及び支援
    5)環境保健対策の推進
    6)医師会活動の記録に関すること
  3. 医療保険部
    1)診療報酬体系に関する情報の提供
    2)保険医・保険医療機関の指導・監査に関する行政機関等、関係機関との連携強化
    3)労災・自賠責医療に関すること
    4)医薬品に関すること
    5)特定疾患(難病)に関すること
  4. 情報広報部
    1)道医総合情報システムの効率的な運用と情報提供
    2)釧路市医師会報・釧医通信の充実・会員への広報
    3)ホームページの充実と総合情報の発信
    4)医療DXの推進
  5. 健診部
    1)健診センターの充実(事業所健診・市町村健診)
    2)健診センターの活動推進と運営
  6. 地域保健部
    1)新興感染症等への対応と情報提供
      ①新型コロナウイルス感染症等への対応(5類移行後の診療体制づくり)
      ②ワクチン接種への対応
    2)地域保健医療の推進(母子保健・乳幼児保健・少子化対策・特定健診・保健指導・生活習慣病)
    3)学校保健活動・学校医の身分に関すること
    4)糖尿病スキルアップ・セミナーの開催
    5)各種ワクチン接種事業の推進
    6)健康スポーツ医に関すること
    7)感染症サーベィランス情報の提供に関すること
    8)保健所に関すること
    9)うつ病・自殺予防対策事業の推進に関すること
  7. 医療安全部・医事法制部
    1)医の倫理の啓発と自浄作用の強化推進
    2)医療安全推進週間への積極的参加
    3)診療情報等に関する保健所との連携強化
    4)医事紛争の適正・迅速処理と医師賠償責任保険の理解徹底
    5)医事法制に関すること
    6)医療相談に関すること
    7)医療安全に関するマニュアル等の整備
  8. 学術部
    1)日医生涯教育講座の積極的な開催
    2)学会及び教育・研究機関との連携強化
    3)各種研修会・講習会への支援・協力
  9. 産業保健部
    1)地域産業保健センター事業に関すること
    2)産業医研修事業の充実
    3)研修会等の情報提供
    4)産業医と精神科等専門家とのネットワークシステムの構築
  10. 地域福祉部
    1)介護保険制度並びに障害者自立支援制度への対応
    2)介護保険関連情報の収集・提供
    3)地域福祉団体との連携強化
    4)母子福祉・児童福祉・障害者福祉・精神保健福祉に関すること
    5)地域包括ケアシステムに関すること
  11. 救急医療部
    1)救急医療体制の保持及び釧路市休日夜間急病センターの管理運営
    2)救急医療体制の確保(メディカルコントロール体制構築の支援等)
    3)救急医療機関の相互連携強化
    4)災害時医療救護訓練への積極的参加及び釧路管内医療救護体制の構築
    5)ドクターヘリ運用体制の強化
    6)カンタン救急蘇生講習会の継続開催
  12. 医業経営・福利厚生部
    1)道医主催医業経営講習会への積極的参加(患者接遇研修会を含む)
    2)税制および年金に関すること
    3)福利厚生事業の見直し・充実検討
  13. 医療関連事業部
    1)医師の労働環境に関すること
    2)釧路市医師会看護専門学校の運営に関すること(令和8年募集停止と令和12年度閉校予定)
    3)勤務医の組織強化(総務部と連携)
    4)勤務医連携の組織強化(逆紹介の促進)
    5)女医会への支援
    6)男女共同参画に関すること
  14. 財務部
    1)一般社団法人移行に伴う組織の強化
    2)健全会計保持のための対策研究(総務部と連携)
    3)会計・経理の適切な運用
  15. 地域医療部
    1)地域医療に関すること
      ①医師確保に関すること
      ・開業支援金の設立(釧路市ホームページ掲載 令和5年4月1日)
      ②地域医療連携に関すること
      ③がん対策に関すること
      ④へきち医療に関すること
      ⑤医療機関の運営に関すること
      ⑥くしろCKDネットワーク委員会の運営に関すること
      ⑦外国人傷病者医療の対応について
    2)医療施設に関すること
      ①医療施設・施設整備に関すること
      ②共同利用施設に関すること
      ③精度管理に関すること
      ④医療廃棄物に関すること
    3)病院団体との連携に関すること