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釧路市医師会方針

令和5年度 釧路市医師会事業計画

各専門部は、令和5年度 釧路市医師会事業計画を踏まえつつ、以下の事業を中心に活動する。

 2019年12月中国で発生した新型コロナウイルス感染症が全世界を恐怖に陥れ、日本においてもこれまで築いてきた医療体制から、有事の医療体制に変更を余儀なくされて丸3年半が経過しました。この間、未知のウイルスに対応するため医療従事者の献身的な努力が続けられ、感染防止に努める国民の対応とともに、各医療機関がそれぞれの役割を担い診療に従事してきた結果、日本は諸外国に比べ低い致死率と感染率に抑えられてきました。昨年はオミクロン株が国内外で猛威を振るい、釧路市においても過去最多の新規感染者数と入院数を更新するとともに、基幹病院や中核病院、高齢者施設で過去最多のクラスターが発生し、救急医療体制のみならず一般診療にも影響が出ました。釧路市医師会におきましては、各医療機関がそれぞれ対応可能な感染予防・拡大予防対策をとりながら、重点医療機関による入院治療や、発熱外来などの診療体制の強化、PCR検査センターなど検査体制の確保、抗ウイルス薬の処方、ワクチン接種、自宅療養者健康観察など行政と協力・連携し、地域住民の健康を守って参りました。そして新型コロナウイルスの感染の波が繰り返される中、5月8日感染症法上の取り扱いが5類に変更され、社会はウイズコロナの方向に舵が切られ、私たちは今まさに3年半に及んだコロナ診療から新たな時代への過渡期に立たされています。
 そうした中、今年度も釧路市医師会においては多くの課題がありますが、その中でも特に新規事業として加えた次の重要課題について会員の皆様と情報を共有し、地域住民をはじめ医療従事者も健全に働ける持続可能な医療体制を作る上で極めて重要な年度になると考えています。行政とも緊密な連携をとり医療、介護、福祉が三位一体となって安心して生活ができる社会を構築する一助となるよう尽力して参りたいと思います。
 さて、今年度の一つ目の重要課題は5類以降の医療体制の確立です。国の方針としては、行政の関与を前提とした限られた医療機関による特別な対応、いわゆる有事の医療体制ではなく幅広い医療機関による自律的な通常診療を求めています。その段階的移行として、秋冬の感染拡大に備える診療体制への取り組みと診療報酬の評価、そして最終的には令和6年4月に施行される6年に一度の診療・介護・福祉報酬のトリプル改定に伴う新たな診療報酬体系による通常医療体制を目指しており、私たちは、今後この大きな変化に医療・介護・福祉間で協力、連携しながら順応していかなくてはいけません。
 釧路管内の5類以降の医療体制ですが、入院医療体制としてはコロナ患者の確保病床数が重点医療機関と受け入れ協力医療機関を合わせ100床余りとなりました。これは昨年末の第8波における最大入院患者数の67名より余裕をもった病床数の確保となりました。また外来対応医療機関は診療所と病院併せて52件となり、これまでより多くの対応医療機関を得ることができました。しかし感染症医療と通常医療が両立できる体制を維持する上でより多くの医療機関の協力が必要で、最終的にはすべての医療機関による対応に向けて、また今後さらに感染力が強く若年者の重症化リスクも高い変異株の出現に備えて、各医療機関がこれまでの経験と知識を生かして新たな局面に対応できる体制を整えていく必要があります。
 二つ目の課題は土曜午後及び休日内科系一次救急の問題です。昨今の開業医数の減少や医師の高齢化と健康問題等で、輪番制の現在の当番から脱退される医師が相次ぎ、これまで使命感や自己犠牲で協力している医療機関の当番回数増加の負担に加え、コロナ対応等による職員の心身の疲弊も問題となり、現在の在宅当番制の継続が困難となってきました。そこで多くの道内同規模他市と同様に、休日と夜間の診療を現在の夜間急病センターに集約し、行政と共同で運営を行い管内の幅広い医療機関から医師出向のご協力をいただき、将来に渡る持続可能な一次救急医療体制の実現に向けて進んでいきたいと思います。
 三つ目の課題は精神科医療です。釧路管内では昨年から今年にかけて、基幹病院の精神科診療の大幅縮小や休診、クリニックの閉院が続き、今後、精神科医療の逼迫が社会問題となる危惧があります。これまで精神科の病病、病診連携はもとより、非専門医による患者受け入れの協力等により急場を凌いできましたが、その限界もあり、地域の精神科医療を維持するため道庁や大学病院、公的病院からの医師派遣、自治体間連携などの公的な診療支援を保健所はもとより総力を挙げて求めて参りたいと思います。また、釧路市の精神科・小児科医師招聘のための開業支援事業を有効活用すべく、広報、情報収集を行いこの試みが実効性の高い事業に発展するよう行政と協力していきます。
 四つ目の課題は、看護専門学校の学生数減少の問題です。開校してから平成27年まで100名以上の受験者数、35名以上の入学者数を保ってきましたが、ここ数年は、受験者数、入学者数の減少が顕著になり定員割れの状態が続いています。その背景には人口減少、少子化、看護大学の設立やコロナ禍をはじめとする社会的な側面もあり、この現象は市内他校をはじめ、全国の医師会立看護専門学校にも共通した問題となっています。日本医師会は厚生労働省に学校経営への財政支援、苦学生への支援充実、実習施設の確保に関する働きかけ、看護職希望者増につながるような広報活動の4点の実現を求めました。どれも私たちの学校にも該当する内容ですが、入学者確保のためにまずは地域で可能な取り組み、例えば広報など募集方法の強化や、行政と協力して奨学金制度等の支援も備えた管内の自治体推薦枠の設立を検討しています。
 関連事業の健診センターは、25余年にわたる職員の堅実な仕事の積み重ねの結果、地域住民や企業、行政から信頼を得て地域の予防医療に貢献し、コロナ禍にあっても経営は安定して経過されています。今年度は、巡回健診用車両の更新や老朽化した医療器械備品の更新を行い、業務効率を高めて今後のさらなる安定経営の継続を図るとともに、釧路市と連携して臨時市民健診等を通し、特定健診受診率の向上に努めます。その他CKDネットワークをはじめコロナ禍で活動の縮小を余儀なくされた事業も数多くあり、今年度は、その再活動を図って参ります。
 一方、日本の医療に目を向けると、令和5年度は、かかりつけ医の役割が初めて法律に明記され、かかりつけ医機能の制度整備が行なわれます。医療資源が乏しい地方においては、診療科や開業、勤務医の別にかかわらず、個々の医療機関がかかりつけ医機能をより強化した上で役割分担をし、医療機関間の連携によって地域医療を面で支えることが必要です。幸いなことに釧路市は医療機関連携が円滑に行われていますが、今後起こりうる困難な局面に対して、互いの役割をさらに理解、尊重してこの地域の医療を支えていく必要があります。医療DXについては、今後レセプト・特定健診情報に加え、予防接種、電子処方箋情報の共有、電子カルテ情報の標準化が進められ、医療現場の負担軽減と医療の質の向上が図られることになるとされていますが、行政から国民への周知と個人情報保護の徹底が担保されなければなりません。将来の利便性を理解しながらも現場に混乱が無いよう慎重に対応していく必要があります。また、地域医療構想、医師の働き方改革、医師偏在解消の三位一体の議論は、地域医療の存亡に関わる極めて重要な課題です。安易な病院再編統合、働き方改革による派遣医師の引き上げ、地方の医師不足は救急医療をはじめとする地域医療の崩壊に直結するため、行政に釧路の事情を理解していただくための情報発信を行って参りたいと思います。
 未曽有のコロナ禍という不自由で長いトンネルを歩いた3年半でしたが、ようやく出口が見えてきました。今後も会員の皆様とともに、地域住民、医療従事者の皆様が健康で健全に生活、仕事ができるように歩んでいきましょう。
 新たな年度においては次に掲げる各部の事業に精力的に取り組む所存です。会員各位のご理解、ご協力をお願い致します。

  1. 総務部
    1)定款・諸規定の整備に関すること
    2)各種会議の効率的開催
    3)勤務医の入会促進(医療関連事業部と連携)
    4)健全会計保持のための対策研究(財務部と連携)
    5)新入会員に対する説明機会の確保
    6)医師会組織の更なる強化
    7)個人情報の保護・診療情報の開示についての情報提供
    8)一般社団法人移行後の会務の適切な管理・運営
    9)関係施設への情報の徹底
    10)会員の個人情報に関すること
  2. 医療政策部
    1)医療政策の研究・提言、情報・資料の収集、整備、提供
    2)医療制度改革に関する情報・資料の提供(勤務医、開業医協同作戦)
    3)地域保健・医療・福祉へのより積極的な取組と協力
    4)地域医療住民フォーラムの開催及び支援
    5)環境保健対策の推進
    6)医師会活動の記録に関すること
  3. 医療保険部
    1)診療報酬体系に関する情報の提供
    2)保険医・保険医療機関の指導・監査に関する行政機関等、関係機関との連携強化
    3)労災・自賠責医療に関すること
    4)医薬品に関すること
    5)特定疾患(難病)に関すること
  4. 情報広報部
    1)道医総合情報システムの効率的な運用と情報提供
    2)釧路市医師会報・釧医通信の充実・会員への広報
    3)ホームページの充実と総合情報の発信
  5. 健診部
    1)健診センターの充実(事業所健診・市町村健診)
    2)健診センターの活動推進と運営
  6. 地域保健部
    1)感染症危機管理対策の充実と情報提供
      ①新型コロナウイルス感染症等への対応(5類移行後の診療体制づくり)
      ②ワクチン接種への対応
      ③釧路PCR検査センターの運営に関すること(令和5年4月末閉所)
    2)地域保健医療の推進(母子保健・乳幼児保健・少子化対策・特定健診・保健指導・
      生活習慣病)
    3)学校保健活動・学校医の身分に関すること
    4)糖尿病スキルアップ・セミナーの開催
    5)各種ワクチン接種事業の推進
    6)健康スポーツ医に関すること
    7)感染症サーベィランス情報の提供に関すること
    8)保健所に関すること
    9)うつ病・自殺予防対策事業の推進に関すること
  7. 医療安全部・医事法制部
    1)医の倫理の啓発と自浄作用の強化推進
    2)医療安全推進週間への積極的参加
    3)診療情報等に関する保健所との連携強化
    4)医事紛争の適正・迅速処理と医師賠償責任保険の理解徹底
    5)医事法制に関すること
    6)医療相談に関すること
    7)医療安全に関するマニュアル等の整備
  8. 学術部
    1)日医生涯教育講座の積極的な開催
    2)学会及び教育・研究機関との連携強化
    3)各種研修会・講習会への支援・協力
  9. 産業保健部
    1)地域産業保健センター事業に関すること
    2)産業医研修事業の充実
    3)研修会等の情報提供
    4)産業医と精神科等専門家とのネットワークシステムの構築
  10. 地域福祉部
    1)介護保険制度並びに障害者自立支援制度への対応
    2)介護保険関連情報の収集・提供
    3)地域福祉団体との連携強化
    4)母子福祉・児童福祉・障害者福祉・精神保健福祉に関すること
    5)地域包括ケアシステムに関すること
  11. 救急医療部
    1)救急医療体制の保持及び釧路市夜間急病センターの管理運営
    2)救急医療体制の確保(メディカルコントロール体制構築の支援等)
    3)救急医療機関の相互連携強化
    4)災害時医療救護訓練への積極的参加及び釧路管内医療救護体制の構築
    5)ドクターヘリ運用体制の強化
    6)カンタン救急蘇生講習会の継続開催
    7)休祭日当番のセンター化に向けて(急病センターに集約)
  12. 医業経営・福利厚生部
    1)道医主催医業経営講習会への積極的参加(患者接遇研修会を含む)
    2)税制および年金に関すること
    3)福利厚生事業の見直し・充実検討
  13. 医療関連事業部
    1)医師の労働環境に関すること
    2)釧路市医師会看護専門学校の運営推進
    3)勤務医の組織強化(総務部と連携)
    4)勤務医連携の組織強化(逆紹介の促進)
    5)女医会への支援
    6)男女共同参画に関すること
  14. 財務部
    1)一般社団法人移行に伴う組織の強化
    2)健全会計保持のための対策研究(総務部と連携)
    3)会計・経理の適切な運用
  15. 地域医療部
    1)地域医療に関すること
      ①医師確保に関すること
       ・開業支援金の設立(釧路市ホームページ掲載 令和5年4月1日)
      ②地域医療連携に関すること
      ③がん対策に関すること
      ④へきち医療に関すること
      ⑤医療機関の運営に関すること
      ⑥くしろCKDネットワーク委員会の運営に関すること
      ⑦外国人傷病者医療の対応について
    2)医療施設に関すること
      ①医療施設・施設整備に関すること
      ②共同利用施設に関すること
      ③精度管理に関すること
      ④医療廃棄物に関すること
    3)病院団体との連携に関すること